3Dプリンターフィラメント種類別選定ガイド 強度・耐熱・印刷温度

3Dプリント テストキューブ

FDM(熱溶解積層式)3Dプリンター用のフィラメントは多くの材質・種類があり、印刷した3Dモデルの用途に応じた耐久性、曲げ強度、耐熱性・印刷できる3Dプリンターの温度設定、必要な機能などがフィラメントの材料ごとに異なります。これから3Dプリンターで何か作るときのフィラメント選定の参考として一覧にまとめました。




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3Dプリンターのフィラメントとは

3Dプリンターのフィラメントは主にFDM(熱溶解積層方式)の3Dプリンターで使われる材料で糸状の樹脂。紙に印刷するプリンターで言うインクの役割を果たすものを言います。フィラメントはスプール(リール)と呼ばれる糸巻きに巻かれた状態で1個のスプールあたり1kgで販売されているのが一般的です。
FDMの3Dプリンターはフィラメントを溶かしてノズルから押し出してモデルをプリントしますが、樹脂は溶けると液状になるのでノズルが移動するときプリントしない部分ではフィラメントを押し出していなくてもノズルから流れ出てしまいます。プリントしない場所ではフィラメントを引き戻す動作(リトラクション)をすることで樹脂がノズルから流れ出るのを防ぐため、材料はペレットではなく糸状(フィラメント)になっています。



フィラメントの直径は1.75mmと2.85mmの2種類

世界で最も普及しているのは直径1.75mmフィラメントを使用する3Dプリンターですが、歴史的には直径2.85mmの方が古くUltimaker製の3Dプリンターなどでは2.85mmが採用されています。2.85mmのフィラメントは太さがあるので強度があり、絡まったり詰まりにくく、太いノズルへの供給に効果的です。また、1.75mmはより普及しているので価格の安さ、入手性、材質の種類の豊富さでは1.75mmの方が有利になります。


フィラメント1kgに対する長さは?

直径1.75mmのフィラメントでおおよそ330mです。
正確にはフィラメントの直径と材質ごとに比重が違うため、下記の表を海外サイトから引用させてもらいました。

フィラメントの重量に対する長さ



空のフィラメントのスプール(リール)の重量は?

1KG用のスプールでおおよそ248gです。
以上から使いかけのフィラメントの重量から残りの長さが算出できます。







3Dプリンターフィラメントの選定方法

所有している3Dプリンターで印刷できるフィラメントの種類を確認

まず、大前提として所有している3Dプリンターで印刷できるフィラメントの種類が選択肢になります。フィラメントの種類によって印刷時のノズル温度、ヒートベッド、エンクロージャー(囲い)、ダイレクトドライブエクストルーダー等の必要有無が異なります。フィラメントの種類によってはそもそもお手元の3Dプリンター本体が印刷に対応していない、若しくは改造が必要なものがありますので確認する必要があります。

印刷のし易さで選ぶ

印刷のし易さだけで選べば、ノズル温度が低くヒートベッド無しでベッドに良く定着できるPLAがおすすめです。


プリントした物を使用する環境の温度で選ぶ

この動画はPLA,PETG,ABS,ASA,ナイロンの5種類のフィラメントで印刷したモデルを車の中やオーブンに入れて周囲の熱に耐えられるかをテストしています。
社内に置いた結果はPLAは完全に変形してしまい、PETGが若干の変形、その他ABS,ASA,ナイロンは変形しなかったと言うものでした。車の中で使うものはPLAは使用できません。フィラメントの選定は印刷したものを使用する場所の温度に耐えられるか考慮する必要があります。


フィラメント材質の硬さ、軟性、強度で選ぶ

例えば小物入れはフィラメントを選ばず作れますが、スマホケースを作るときははめ込む時にケースを歪めてスマホをはめ込む必要があるので柔らかいフレキシブルのフィラメントが適しています。3Dプリントでバネやゼンマイのようなものを硬いPLAでプリントすると動かした時に割れてしまうので軟性のあるPETGやABSを選ぶと曲げたり縮めたりしてもすぐに割れることがありません。


フィラメントの色、質感で選ぶ

単純にフィラメントの色だけでもたくさんの種類がありますが、金属のようなシルク調、カーボンファイバーや木が混ざったもの、艶消しのマット調フィラメントなど印刷したあとの質感が樹脂とは思えないフィラメントが販売されています。特に艶消しマットのフィラメントは手触りがよく、3Dプリンターをお持ちの方に一度は試していただきたいくらいです。


フィラメントの価格・入手性で選ぶ

アマゾンで1kgのフィラメントではこのPRILINE PLA「1699円」が最安です。
※2022年1月現在









3Dプリンターフィラメントの種類別の特徴

材質

ABS

Flexible

(TPU,

TPE etc)

PLA

HIPS

PETG

Nylon

Carbon Fiber

Filled

ASA

Polycarbonate

Polypropylene

Metal Filled

Wood Filled

PVA

材質

特徴

耐衝撃・耐熱性

軟性・弾性
・耐疲労

 

耐衝撃・耐溶解
・耐薬品

耐水・耐薬品
・耐疲労

柔軟・耐衝撃
・耐熱
・耐疲労

混合材料

耐衝撃・耐UV
・耐熱

耐衝撃・耐熱
・耐疲労

軟性・耐水
・耐熱
・耐疲労

混合材料

混合材料

柔軟・耐衝撃
・耐水
・耐疲労

特徴

強度

★★

40MPa

★★

26 - 43MPa

★★★★

65MPa

★★

32MPa

★★★

53MPa

★★★★

40 - 85MPa

★★★

45 - 48MPa

★★★

55MPa

★★

72MPa

★★

32MPa

★★

20 - 30MPa

★★★

46MPa

★★★★★

78MPa

強度

硬さ

★★★

5/ 10

1/ 10

★★★★

7.5/ 10

★★★★★

10/ 10

★★★

5/ 10

★★★

5/ 10

★★★★★

10/ 10

★★★

5/ 10

★★★

6/ 10

★★

4/ 10

★★★★★

10/ 10

★★★★

8/ 10

★★

3/ 10

硬さ

耐久性

★★★★

8/ 10

★★★★

9/ 10

★★

4/ 10

★★★★

7/ 10

★★★★

8/ 10

★★★★★

10/ 10

★★

3/ 10

★★★★★

10/ 10

★★★★★

10/ 10

★★★★★

9/ 10

★★

4/ 10

★★

3/ 10

★★★★

7/ 10

耐久性

最高使用温度

98°C

60 - 74°C

52°C

100°C

73°C

80 - 95°C

52°C

95°C

121°C

100°C

52°C

52°C

75°C

最高使用温度

熱膨張係数

90µm/m-°C

157µm/m-°C

68µm/m-°C

80µm/m-°C

60µm/m-°C

95µm/m-°C

57.5µm/m-°C

98µm/m-°C

69µm/m-°C

150µm/m-°C

33.75µm/m-°C

30.5µm/m-°C

85µm/m-°C

熱膨張係数

密度

1.04g/cm3

1.19 - 1.23g/cm3

1.24g/cm3

1.03 - 1.04g/cm3

1.23g/cm3

1.06 - 1.14g/cm3

1.3g/cm3

1.07g/cm3

1.2g/cm3

0.9g/cm3

2 - 4g/cm3

1.15 - 1.25g/cm3

1.23g/cm3

密度

価格
(1kgあたり)

$10 - $40

$30 - $70

$10 - $40

$24 - $32

$20 - $60

$25 - $65

$30 - $80

$38 - $40

$40 - $75

$60 - $120

$50 - $120

$25 - $55

$40 - $110

価格
(1kgあたり)

印刷容易性

★★★★

8/ 10

★★★

6/ 10

★★★★★

9/ 10

★★★

6/ 10

★★★★★

9/ 10

★★★★

8/ 10

★★★★

8/ 10

★★★★

7/ 10

★★★

6/ 10

★★

4/ 10

★★★★

7/ 10

★★★★

8/ 10

★★★

5/ 10

印刷容易性

ノズル
温度

220 - 250°C

225 - 245°C

190 - 220°C

230 - 245°C

230 - 250°C

220 - 270°C

200 - 230°C

235 - 255°C

260 - 310°C

220 - 250°C

190 - 220°C

190 - 220°C

185 - 200°C

ノズル
温度

ベッド温度

95 - 110°C

45 - 60°C

45 - 60°C

100 - 115°C

75 - 90°C

70 - 90°C

45 - 60°C

90 - 110°C

80 - 120°C

85 - 100°C

45 - 60°C

45 - 60°C

45 - 60°C

ベッド温度

ヒートベッド

必要

   

必要

必要

必要

 

必要

必要

必要

   

必要

ヒートベッド

推奨
ベッド表面

Kapton Tape,

ABS Slurry

PEI,

Painter's Tape

Painter's Tape,

Glue Stick,

Glass Plate,

PEI

Glass Plate,

Glue Stick,

Kapton Tape

Glue Stick,

Painter's Tape

Glue Stick,

PEI

Painter's Tape,

Glue Stick,

Glass Plate,

PEI

Glue Stick,

PEI

PEI,

Commercial

Adhesive,

Glue Stick

Packing Tape,

Polypropylene

Sheet

Painter's Tape,

Glue Stick,

PEI

Painter's Tape,

Glue Stick,

PEI

PEI,

Painter's Tape

推奨
ベッド表面

その他
必要機器

Heated Bed,

Enclosure

Part Cooling

Fan

Part Cooling

Fan

Heated Bed,

Enclosure

Heated Bed,

Part Cooling

Fan

Heated Bed,

Enclosure,

All Metal

Hotend

Part Cooling

Fan

Heated Bed

Heated Bed,

Enclosure,

All Metal

Hotend

Heated Bed,

Enclosure,

Part Cooling

Fan

Wear Resistant

or

Stainless Steel

Nozzle,

Part Cooling

Fan

Part Cooling

Fan

Heated Bed,

Part Cooling

Fan

その他
必要機器

材質

ABS

Flexible

(TPU,

TPE etc)

PLA

HIPS

PETG

Nylon

Carbon Fiber

Filled

ASA

Polycarbonate

Polypropylene

Metal Filled

Wood Filled

PVA

材質

参考:SIMPLIFY3D





ABS (Acrylonitrile Butadiene Styrene)

ABSは3Dプリントの世界で長い歴史があり、産業用3Dプリンターで初めて使われたプラスチックの一つがABSでした。何年も経った今でも、ABSは低コストで非常に人気のある素材であり、その靭性と耐衝撃性で知られていて多用途で摩耗に耐える耐久性のある部品を印刷できます。オモチャで有名なLEGOのブロックも同じ理由でABSから作られています。屋外または高温となる環境での使用も有効です。

メリット

・低コスト
・耐衝撃、耐摩耗性
・糸引きや垂れが少ない
・耐熱性

デメリット

・印刷の反りが大きい
・ヒートベッド、エンクロージャーが必要
・印刷中に刺激臭がする
・印刷物が収縮する傾向があり、寸法が不正確になる

ABSの印刷温度

ノズル温度:220 - 250℃
ヒートベッド温度:95 - 110℃
必要機器:ヒートベッド、エンクロージャー





Flexible(TPU, TPE)

フレキシブルフィラメントは硬質プラスチックとゴムを混ぜ合わせたTPE(Thermoplastic Elastomers)でできています。弾力性があり、プラスチックを伸ばしたり曲げたりすることができます。TPEにはいくつか種類があり、3DプリントではTPU(Thermoplastic Polyurethane)が一般的に使用されています。フィラメントの弾力性は製造元の素材の配合によって異なるため、ブランドによって車のタイヤのように硬さのある柔軟であったり、ゴムバンドに近い完全に柔軟なものなど特性が変わります。

メリット

・柔らかく柔軟性がある
・優れた防振性
・貯蔵寿命が長い
・耐衝撃性

デメリット

・プリントが難しい
・印刷が垂れやすい
・糸引きしやすい
・ボーデンタイプのエクストルーダーで印刷できない

TPE,TPUの印刷温度

ノズル温度:225 - 245℃
ヒートベッド温度:45 - 60℃ (無くても印刷可能)
必要機器:ダイレクトドライブエクストルーダー

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PLA(Polylactic Acid)

3Dプリントで最も一般的なフィラメントの種類がPLAです。低い温度でヒートベッド無しで印刷が可能なため、安価な3Dプリンターや初心者でも比較的簡単に印刷することができます。トウモロコシやサトウキビなどの作物から由来する成分で作られています。生物分解、再生可能で現在最も環境に優しい3Dプリンターの材料と言えます。


メリット

・低コスト
・硬く強度がある
・寸法精度が良い
・貯蔵寿命が長い

デメリット

・耐熱性がない
・垂れるため冷却ファンが必要
・フィラメントが脆く、壊れやすい
・室外での直射日光や高温の場所に適さない

PLAの印刷温度

ノズル温度:190 - 220℃
ヒートベッド温度:45 - 60℃(無くても印刷可能)






HIPS(High Impact Polystyrene)

HIPSはリモネンと呼ばれる溶剤によく溶ける材料です。ノズルが2個搭載し2種類のフィラメントが印刷可能なプリンターでABSのサポート材の印刷に一般的に使用されています。サポート材としての役割のみならず、ABSより寸法が安定しており僅かながら軽量であるため、軽くて耐摩耗性の必要な部品の材料に適しています。

メリット

・低コスト
・耐水、耐衝撃性
・軽量
・リモネンに溶ける

デメリット

・ヒートベッドが必要
・エンクロージャーが必要
・印刷温度が高い
・換気が必要

HIPSの印刷温度

ノズル温度:230 - 245℃
ヒートベッド温度:100 - 115℃
必要機器:ヒートベッド、エンクロージャー






PETG(Glycol Modified Polyethylene Terephthalate)

PETGはペットボトルで使われているPETにグリコールを配合したものです。低コストで耐衝撃性に優れていますが、表面は柔らかく摩耗しやすい材料です。また熱特性にも優れており、十分に冷却することでほとんど反りが無い印刷が可能です。エンクロージャーが無くとも印刷できるので若干耐熱性は劣りますがABSより簡単に印刷できます。

メリット

・光沢のある滑らかな仕上がり
・反りが少なく、ベッドに定着させやすい
・印刷中に匂いがない

デメリット

・印刷中垂れやすい
・糸引きしやすい

PETGの印刷温度

ノズル温度:230 - 250℃
ヒートベッド温度:75 - 90℃
必要機器:ヒートベッド、エンクロージャー






ナイロン(Nylon)

ナイロンはプラスチック製品で一般的で靭性と柔軟性があることで知られています。本来ナイロンは印刷するのに約250℃のノズル温度が必要ですが、いくつかのブランドでは薬品を配合することで約220℃で印刷できるフィラメントがあります。多くの3Dプリンターが250℃まで温度が上がらないため、低温タイプが便利でホットエンドをアップグレードせず印刷できるかもしれません。ナイロンフィラメントは吸湿性があるため、吸湿したフィラメントで印刷すると印刷品質が落ちるため保管には注意が必要です。

メリット

・強靭で柔軟性がある
・高い耐衝撃性
・印刷中に不快な匂いがない
・耐摩耗性

デメリット

・反りがある
・吸湿性が高いため、保管に気をつける必要がある
・吸湿したフィラメントは印刷品質が落ちる
・湿度の高い場所には適合しない

ナイロンの印刷温度

ノズル温度:220 - 270℃
ヒートベッド温度:70 - 90℃
必要機器:ヒートベッド、エンクロージャー、オールメタルホットエンド






カーボンファイバー(Carbon Fiber Filled)

炭素繊維であるカーボンファイバーはベースのプラスチック材料と混ぜ合わせることでその材料の特性を向上できます。PLA、PETG、ナイロン、ABS、ポリカーボネートなどとカーボンが混ぜ合わされたフィラメントが販売されています。ダイヤモンドが最も硬い石であるのと同様に炭素から作られるカーボンファイバーを混ぜ合わさることで強度と剛性を高めることができ、繊維が印刷後の冷却時に部品が収縮するのを防ぐ役割を果たすので軽量かつ安定した寸法で印刷することができます。しかし、繊維が含まれるため詰まりの原因になる可能性があり、特殊なハードウェアが必要になる場合があります。

メリット

・強度と剛性が上がる
・寸法が安定する
・軽量

デメリット

・摩耗の原因となるため硬質ノズルが必要
・印刷中垂れやすくなる
・フィラメントが脆くなる
・詰まる可能性が高くなる

カーボンファイバーの印刷温度

ノズル温度:200 - 230℃
ヒートベッド温度:45 - 60℃
必要機器:硬質ノズル、その他ベースのプラスチック材料による






ASA (Acrylic Styrene Acrylonitrile)

ASAは3Dプリントできる材料としてABSに近い特性の素材です。 もともとは、配合に使用するゴムの種類を変更することで耐紫外線性を高めるABSの代替品として開発されました。 ASAは、高い耐衝撃性、高い耐熱性とABSより印刷し易い材料として知られています。 紫外線や過酷な気象条件に対する優れた耐性により、ABSの代わりに屋外用途で一般的に使用されています。 そのことからASAは、ABSで見られるのと同じ印刷時の多くの欠点があります。反りは依然として一貫した問題であり、プラスチックが印刷中に放出する煙は有害であると考えられているため考慮する必要があります。

メリット

・耐紫外線特性
・耐衝撃、耐摩耗性
・耐熱性

デメリット

・高コスト
・高いノズル温度が必要
・換気が必要

ASAの印刷温度

ノズル温度:235 - 255℃
ヒートベッド温度:90 - 110℃
必要機器:ヒートベッド






PC ポリカーボネート(Polycarbonate)

ポリカーボネートは過酷な環境にも耐えられる高強度素材です。非常に高い耐熱性と耐衝撃性があります。150℃の高温でもたわみが起きず、構造を維持することができるため高温の環境での使用に適しています。また、破損することなく曲げることができ、多少の柔軟性が必要な部品でよく使用されます。入手可能なほとんどのポリカーボネートフィラメントには、フィラメントを低温で印刷できるようにする添加剤が含まれているため、各ブランドの印刷温度等を確認してください。ポリカーボネートは非常に吸湿性が高く、吸湿してしまうと印刷品質に影響があるため、保管には密閉された容器に保管するなど注意が必要です。

メリット

・耐衝撃性
・高い耐熱性
・原料が透明
・壊さず曲げることができる

デメリット

・高いノズル温度が必要
・反りを起こしやすい
・印刷中滲み出る傾向が高い
・吸湿性が高く、印刷品質に影響がある

PCの印刷温度

ノズル温度:260 - 310℃
ヒートベッド温度:80 - 120℃
必要機器:ヒートベッド、エンクロージャー、オールメタルホットエンド






PP ポリプロピレン(Polypropylene)

ポリプロピレンは半硬質で軽量のため、主に梱包材料の用途として一般的です。ポリプロピレンで3Dプリントされた部品は冷却時に大きく反るため、印刷が非常に難しい素材です。丈夫で耐疲労性に優れているため、繰り返し折曲がる動作をするヒンジ部分やストラップ、ベルトなどの用途に最適です。

メリット

・耐衝撃、耐疲労特性
・耐熱
・印刷後の表面がスムース

デメリット

・大きな反りが起きる
・低強度
・ベッドへの定着が難しい
・高コスト

の印刷温度

ノズル温度:220 - 250℃
ヒートベッド温度:85 - 100℃
必要機器:ヒートベッド、エンクロージャー






金属配合 (Metal Filled) メタルフィラメント

実際の金属を配合したメタルフィラメントは鉄、銅、青銅、真鍮、ステンレス綱などを粉末状にした鉄粉が含まれています。鉄粉の割合はフィラメントのブランドにより異なり、フィラメントの重量もプラスチックのものに比べて重くなります。金属を配合したフィラメントは印刷時にノズルから押し出されるため摩耗性が高く、真鍮のノズルだと柔らかすぎてすぐに摩耗してしまうため硬質ノズルが必要です。シルクなど金属のような見た目のフィラメントもありますが、実際の金属が配合されることによって見た目だけでなく、重量や触感が金属に近い部品に仕上がります。

メリット

・見た目と手触りが良くなる
・印刷時にノズルを高温にする必要がない
・通常のフィラメントより重量がある

デメリット

・硬質ノズルが必要
・印刷した部品は脆い
・印刷が垂れやすく、サポートが必要
・ノズルが詰まりやすくなる
・高コスト

メタルフィラメントの印刷温度

ノズル温度:190 - 220℃
ヒートベッド温度:45 - 60℃
必要機器:ヒートベッド(無くても印刷可能)






木質 ウッドフィラメント(Wood Filled)

木材を配合したウッドフィラメントはPLAベースの材料に木粉、コルクやその他粉末状の木材を組み合わせた材料です。通常、木粉は約30%程度の配合ですが、フィラメントのブランドにより異なります。木粉はカーボンファイバーや金属に比べると粒子が非常に柔らかいため摩耗性も低くなります。印刷時には木が焦げたような匂いが感じられ、手触りが木に近い部品を作ることができます。

メリット

・木目調のような部品を作れる
・ノズルの摩耗対策が不要
・木の芳香がする

デメリット

・糸引きしやすい
・小さいノズルは時間が経つと部分的に詰まる可能性がある
・小さいノズルに適さない

ウッドフィラメントの印刷温度

ノズル温度:190 - 220℃
ヒートベッド温度:45 - 60℃
必要機器:ヒートベッド(無くても印刷可能)






PVA(Polyvinyl Alcohol)

PVAは水に溶けるサポート材用のフィラメントです。複雑な形状や空洞のあるモデルを印刷する際のサポート材として有効で、温水に漬けることで簡単に溶かすことができます。ノズルを2個搭載し、2種類のフィラメントを印刷できるプリンターでPVAのサポート材と部品をフィラメントを分けて一緒に印刷することで効果的です。

メリット

・水に溶ける
・特殊な機器が必要なく印刷できる

デメリット

・吸湿性がある
・密閉した容器で保管する必要がある
・ノズル温度が高温でプリントしない状態が続くと詰まりやすい
・高コスト

の印刷温度

ノズル温度:185 - 200℃
ヒートベッド温度:45 - 60℃
必要機器:ヒートベッド(無くても印刷可能)











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