光造形方式3Dプリンターで人気のELEGOO MARSシリーズの新型機種MARS 3 Proが発売しましたので早速購入してみました。本記事ではMARS 3 Proのスペック、実際に使ってみたレビューと使い方について解説します。
数ある光造形3DプリンターからMARS 3 Proを選んだ理由
- 新製品で4K液晶の光造形3Dプリンターでは安価
- ELEGOO製品は海外のレビューサイトで評価が高い
- 印刷サイズは大きくはないが小さくもなく同等の製品では中間のサイズ
- AMAZONで家庭用光造形の3Dプリンターを買おうとすると、ELEGOOかANYCUBICの2強ですがANYCUBICはCHITUBOX(多機能・汎用のスライサーソフト)が使えないのでCHITUBOXに対応しているELEGOOを選択しました。
ELEGOO社製3Dプリンターの長所

MARSシリーズやSATURNなどELEGOO社製の光造形3DプリンターではCHITUBOXが使えることに加えて、写真赤枠部分のプラットフォームの作りが最大の長所です。
まず初めに、プラットフォームの水平の調整がボルト2本だけでできます。
また、実際に使ってみて印刷後にプラットフォームから造形物を剥がす時はレジンが手に着くとベタベタするのでプラットフォーム上部の取り付けネジ部分を掴んで造形物を剥がしますが、しっかりと剛性のある作りなので調整したプラットフォームの水平が簡単にはズレないのが素晴らしいと思います。

他社製品を比較すると写真はANYCUBICの光造形3Dプリンターですが、プラットフォームの水平調整部は小さな4本のネジになっています。
プラットフォームの調整時はネジを4本回さないといけません。
また、造形物を剥がすとき簡単には調整した位置はズレないのかもしれませんが、太いボルトを使っているELEGOO製と比較すると剛性があるとは言えないと筆者は考えています。
ELEGOO MARS 3 Pro のスペック

方式 | UV 画像硬化 |
光原 | UV Integrated LED (波長 405nm) |
XY解像度 | 0.035mm (4098 X 2560) |
Z軸精度 | 0.00125mm |
レイヤー厚さ | 0.01 - 0.2mm |
印刷時間 | 1.5 - 3 sec / layer (30 - 50 mm / H) |
電源電圧 | 100 - 240 V 50/60 Hz |
本体サイズ | 22.7 cm (L) X 22.7 cm (W) X 43.85 cm (H) |
造形サイズ | 14.336 cm (L) X 8.96 cm (W) X 17.5 cm (H) |
本体重量 | 5.2 kg |
Mars 3 Pro のレビュー ・ 使い方
筆者が実際にMARS 3 Proを買って使っています。開梱からテストプリント、片付けまで解説します。
本体と付属品について

写真が本体含めて付属品全てです。
・MARS3Pro本体
・電源コード
・六角レンチ
・ニッパー
・スクレーパー (樹脂製と金属製2種類)
・空気清浄機
・予備のFEPフィルム2枚
・USBメモリ
・ストレーナー
・マスク・ゴム手袋
本体の組み立て
組み立てると言うほどの作業はありません。主にパッケージや保護シールを剥がしてセットするだけです。

レジンのトレイの裏側と液晶にも保護フィルムが貼ってあるので忘れずに剥がしていきます。

プラットフォームの保護フィルムを剥がしてセット。

電源コードの接続は本体裏側にあります。
空気清浄機の取り付け
MARS3Proには空気清浄機が付属しており、これでレジンの嫌な匂いを抑えてくれます。

新品の状態だとフィルターがビニールで包まれているので空気清浄機の中身のフィルターを一度取り出し、ビニール袋からフィルターを取り除きます。
フィルターは炭の筒状メッシュの様なものでUSBファンが付いている簡単な空気清浄機です。

本体ケース内のUSBアダプターのメクラを剥がして空気清浄機を接続します。
プラットフォームのレベル調整
印刷を開始する前にプラットフォームのレベル調整が必要です。
これが上手くいかないとプラットフォームに造形物が定着せず、印刷に失敗してしまいます。3Dプリントで失敗しないためにも重要な作業です。

①プラットフォームをセット、ハンドルを締め付け、プラットフォーム固定部の六角ネジを六角レンチで完全に緩めておきます。

②レジンのトレイを外し、A4用紙を用意、液晶の上に置きます。

③電源を入れ、メニュー画面 左の「Tool」をタッチ

④「Manual」をタッチ

⑤左中央のお家🏠のボタンを押して一度原位置出しを行います
このマニュアル画面の操作方法は、画像の上側 [0.01mm], [1.00mm], [10.00mm]のボタンで移動量が選択でき、
例えば[1.00mm]を選択して[↑]をタッチするとプラットフォームを1mm上昇させることができます。

⑥原点出しをしてA4用紙がプラットフォームと液晶の挟まっている状態で六角ネジを締め付けます。

六角ネジは#1⇨#2の順に締め付けます。
ネジを緩めることでプラットフォームの取り付け角度が動き、A4用紙を挟んで液晶の傷防止、液晶とプラットフォームがぴったり当たる状態でネジを締め付けることで液晶とプラットフォームの水平が調整されます。

⑦マニュアル操作画面で[0.01mm]を選択、[↑]若しくは[↓]を操作してA4用紙が若干擦れながら前後に動かせる高さにプラットフォームを調整します。
⑧右下黄色の↩︎ボタンをタッチ

⑨右上の[Set Z=o]をタッチ

Z軸のゼロセットします。続けますか?とメッセージがでるので[Confirm]をタッチ
以上でレベル調整、Z軸のゼロセットが完了です。
テストプリント
本体付属のUSBにテストプリント用のデータが入っているのでそちらを印刷してみました。

今回はこちらの半透明の緑色レジンを使ってみます。

手袋をしてMARS3Proのトレイにレジンを流し込みます。
勢いよく流し込むと気泡ができてしまうのでゆっくり気泡ができない様に注意します。
レジンは手に触れるとベタベタ、肌が荒れるので手袋をしておいた方がいいです。

テストプリントのモデルはそれほど大きくないのでMAXのラインの半分くらいにしておきました。
大きいモデルを作る場合は印刷中に一時停止してレジンを継ぎ足す必要があります。

付属のUSBメモリに入っているデータの「Rook Mars 3.ctb」を選択

赤いボタンを押すと印刷開始します。


印刷時間2時間18分と表示されていました。
赤いボタンが印刷中止、青いボタンが印刷一時停止、黄色が印刷設定です。

印刷完了するとこの画面が表示されます。

綺麗に印刷できました。
造形物の洗浄、2次硬化
光造形の3Dプリンタでは造形後、ベタベタの液体のレジンが付いているので洗浄し、2次硬化させる必要があります。
通常のレジンだと洗浄にIPA(イソプロピルアルコール)を使用します。このIPAは揮発性が高く、可燃性もあり肌に着くと肌荒れの原因にもなるので注意が必要です。
水洗いレジンの場合は名前の通り水で洗浄することができます。

消毒用にも使われているので薬局で購入可能。今回濃度70%のものが丁度家にありましたのでこちらを使っています。
3Dプリンター用には濃度が高いものが良いです。

空瓶の中に造形物とIPAを入れて、蓋をしてシェイクすることで洗浄してみました。

洗浄後、2次硬化はELEGOO MERCURY PLUSで3分ほどUVライトを照射。
専用の硬化器を使わなくても太陽光やUVのLEDライトがあれば硬化できますが、やはり専用の硬化器が回転テーブルとタイマーがセットになっていて便利です。

FDMの3Dプリンターとは比べ物にならないくらい綺麗に印刷できました。
レジントレイの洗浄、片付け

同じレジンを使って他にも造形する場合はプラットフォームを固定して引き続き印刷できますが、
他のレジンも後日試してみたいので片付けることにしました。

トレイに残ったレジンは固まりが混ざっている可能性があるので付属のストレーナーで濾過してからボトルに戻します。
今回、実際にはゴミや固まりはほとんどありませんでした。

プラットフォームはタッパーに入れてIPAで洗浄。筆でなぞると少ないIPAで綺麗になります。

トレイも同様にIPAですすいでウエス等で拭きとって完了です。
ELEGOO MARS 3 Proのレビューまとめ
筆者が初めての光造形3DプリンターにMARS3Proを実際に使ってみて思ったことを以下にまとめました。
レジンは水洗いレジンがおすすめ
今回、通常のレジンを使いましたが洗浄にIPAが必要で、洗浄液の費用がかかります。
またIPAは可燃物なので扱いにくく、理由がない限り水洗いレジンの方が結果的にコスパも良く、扱いやすいと感じました。
これから初めて光造形の3Dプリントをする場合は水洗いレジンをお勧めします。
ゴミやホコリが入らない様に気を付ける必要がある
掃除するときにレジンを拭き取る際、普通にボロ切れやティッシュだとホコリが着くのでレジンにゴミが入らない様に気を使います。
キムワイプだとティッシュの様にホコリが入らず、綺麗に拭き取れました。
フィギュアや何か売り物など綺麗さ・高精度が必要ないならFDM式3Dプリンターを使うべし
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材料や洗浄液、ろ過フィルター、2次硬化のための場所と機器が必要でコスパが良くないと思いました。
お子様にはまず向かないですし、フィギュアを作らない限りは3Dプリンター入門ではFDM方式がいいですね。
ELEGOO MARS 3 Proは大満足
他メーカーの光造形3Dプリンターと比較して性能や作り、コスパ良く満足しています。
液晶周囲のプレートや支柱、プラットフォームがアルミニウム製で全体的に非常に剛性のある作りです。
本記事を書いている時点で既に10回以上印刷していますが未だ1回も失敗はありませんでした。